評価:★★★☆☆
映画館(第七藝術劇場)で鑑賞。
今ひとつ物足りない。
テーマとしては面白いし、問題提起として言いたいことも分かるのだけど、もっと突っ込んでくれないと。
「ドキュメンタリー」というより「記録」に近い感覚。
ただ淡々とヤクザの日常が描かれていて、「こういう問題があります」で終わってしまってる感じ。
「どうしてこういう問題が起きているのか」までいって欲しかった。
いまいち深みがないというか平面的というか。
例えば保険会社や学校・保育園・幼稚園に話を聞きに行ったり、暴対法を作った政治家にインタビューしたり、近くに住んでいる人たちとの関係を取材したり、できることは他にもいろいろあったと思う。
「これだけ締め付けが強いのにヤクザを辞めようとは思わない?」という質問に親分が「辞めてどこが受け入れてくれる?」と返してたけど、そこをもうちょっと突き詰めて「ヤクザを辞めた後のセーフティネットをどうしたら良いか」まで話が広がれば良かったのだけど、その件もなんだかフワッと終わってしまったし。
個人的には「ヤクザとか暴力団とか極道とかいろんな呼ばれ方してるけど、どう呼ばれたい? 逆に、言って欲しくないのは?」ということを聞いてみて欲しかった。
新世界の飲み屋のオバちゃんの話が一応入ってたけど、あれだけじゃ実際のところはよく分からない(親分本人が目の前に居たし)。
ヤクザが一般社会に溶け込んでいて、事務所の前を小学生が普通に通り過ぎるというのも、神戸に生まれ育った人間としては割と日常で特別珍しい光景でもない。
保険とか銀行とか学校とかでいろいろ理不尽とも言える扱いを受けていることも、情報としては当然知ってるというレベル。
「あぁ、それは全然知らなかった」ということはほとんど無かった。
事務所に通い詰めた撮影スタッフたちはさぞ怖かっただろうしご苦労様なのだけど、それだけじゃねぇ……。
背中の刺青とか短くなった指とか「分かりやすい画」を入れるのも、なんだかなぁという感じで。
これだけのタイトルを付けるような「映画」だったのかと言うと大いに疑問。
絶滅寸前の「ヤクザ」を映像に残すこと自体に意味や価値はあるのかも知れないけど。