考えてること・考えたこと

「Let's DANCE | 署名推進委員会」のサイトおよび活動について思うこと。

5/29(火)の活動開始に合わせて、「Let's DANCE | 署名推進委員会」というサイトが本格オープンしました。
このサイトは、「「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下、風営法)の規制対象から「ダンス(させることを目的に店舗を営業すること)」を削除すること」を主な目的とした運動および活動の、いわばプラットフォームです。


»Let's DANCE | 署名推進委員会
(画像はこの記事を本格的に書き始めた 6/5 時点のものなので、現在の画面とは異なります)

オープン後も着々と更新や修正が続けられているようで、まだまだ「完成」とは呼べないものの、ただロゴ画像とテキストを載せていただけのオープン前の状態を考えると、よくここまで持ってこれたなぁ、というのが正直な感想です。
見えないところで、たくさんの人たちがずっと前から準備していたんでしょうね。本当にご苦労さまです。

基本的に、僕は彼ら(「Let's DANCE 署名推進委員会」(以下、委員会))が訴えている風営法の改正には賛成です。
署名も、すべての疑問が晴れた後にしようと思っています(「疑問」については後述)。
そして、法律が絡んだ運動ですから、サイトや様々な個々の活動についても、当然弁護士と相談をしながら進めているんだろうとは思います。

ただ、それでもやはり気になる点があるので、ここらで書き残しておくことにします。
(直接問い合わせてみようかと考えていることも、いくつかあります)

ま、「何度か知り合いに誘われて数回『クラブ』と呼ばれるところに行ったことはある」という程度な僕の、あくまで個人的な意見としてですけどね。
法律改正の是非について議論するつもりはない(というかできない)ので、それは他へ譲るとして、ここでは僕が「思ったり感じたりしたこと」だけを書いていきます。

いろいろ書いてたら予想以上に長くなってしまったので、全部読むのがメンドくさい人は最後の方にある「まとめ」だけ読んでください。

「ダンス必修化」の記述は必要?

ABOUT」のページで、まず「営業目的でダンスをさせること」が法律で規制されていることを紹介し、その次に「中学校でダンスが必修科目になる」ことを紹介しています。
その下でようやく、現在の風営法制定の成り立ちについて書かれています。

僕は、どうしてもこの記述に違和感を覚えるんですよね。
サイトの顔とも言えるこのページにおいて、そもそもの問題(風営法の成り立ちや問題点など)よりも先に、なぜ「中学校でのダンス必修化」が書かれているんでしょうか。
本格オープン前のテキストでも強く触れられていましたが、それを読んだときから、どうも論点がズレているようにしか思えないんです。

確かに、「クラブ」というものに縁遠い一般の人へ訴えかけるためには、身近な話題から入った方が分かりやすいのかも知れません。
でも、「ダンスが必修科目になる=時代とマッチしてない=法改正を!」という論理は、どう考えてもおかしい。
むしろ「論点をすり替えている」と批判される危険性すら孕んでいると思います。

「中学校でのダンス必修化」について触れる必要はないんじゃないかと僕は考えています。
いっそ一切の記述をなくしてしまった方が、論点がはっきりして分かりやすくなるような気がしますし。
あるいは、どうしても触れる必要があるなら、もっと扱いを小さくして「ちなみに……」という程度で充分でしょう。

ここまで強く押し出す(強調する)ということは、それだけ論点がズレたり批判の的になったり誤解を招いたりするリスクを負う、ということです。
そのリスクを負ってまで載せる必要や価値がどこにあるのか、イマイチ僕には分かりません。

現状について

現在の風営法でダンス(をさせることを目的に店舗を営業すること)が規制されている理由は、「売買春を取り締まるため」ですよね?
そして、その風営法が制定されたのは、戦後間もなくの 1948 年(昭和 23 年)。
何度かの改正は行われたものの、「クラブでダンスをさせること」は摘発することが可能な形で今日に至る、と僕は理解しています。

であるならば、「クラブは売買春の温床になどなっていないし、もし仮にそのようなことがあったとしても、それはダンスとは関係のないことだし、個別に厳正な対処を行う」ということを訴えるべきではないでしょうか?

はっきり言って、「クラブ」に対する一般的なイメージは良いものではありません。
「暗いし」「閉鎖された空間だし」「チャラいし」「何となくダーク」というのが、ほとんどの人が抱いているイメージでしょう。
テレビ番組や映画などでクラブが出てくるシーンも、だいたい「何となくダーク」な空間として使われている印象があります。
営業時間が夜遅いのも、良くないイメージに拍車をかけているのかも知れません。

だからこそ、警察も積極的に摘発できる訳ですよね。
「客にダンスをさせた疑いで店長を逮捕」というニュースを見ても、「本当はそれだけじゃないんじゃないの?」という印象を抱く人も多いんじゃないでしょうか。
そして、何事も無かったようにニュースは過ぎ去っていき、それを見た人も特にそれ以上の興味を持つことはないでしょう。

次々とクラブが摘発されようが、一般の人はそれに疑問を持たない(持つ人が少ない)ですし、あるいは「摘発されても仕方ないんじゃない?」とさえ思うかも知れません。
(そもそも「そのニュースを見たとしたら」という話ですが)

訴えるべきことは?

そんな一般の人たちに向けて「ダンスは中学校では必修科目になる」と訴えても、法律改正に向けた運動に参加してもらえるほど響くとは思えません。
むしろ真っ向から、「自分たちはこういうことがしたい。でも今の風営法にはこういう問題があってできないから、ここをこう改正して欲しいと考えている。だから協力して!」と訴えた方が、よっぽど関心を持ってくれると思います。

それと同時に、一般の人が抱いている「何となくダークなイメージ」を払拭しなければなりません。
そのためにはまず、前述の通り風営法による摘発の根拠となっている「売買春」について、「そんなものの温床になんてなっていない」ということを徹底的に訴えて、理解してもらう必要があります。

さらに、例えば「売買春は刑法○条で、ドラッグは刑法○条で、暴力沙汰は刑法○条で……」という風に、「風営法が無くても他の法律でクラブの安全性は充分に保てる」ことを、具体的にアピールすべきではないでしょうか。

要するに、「クラブ」という「得体の知れない何となくダークな存在」に対する不安を、徹底的に解消するべきなんです。

また、実は次のことが一番大事なことだと思っているのですが、「もし万が一、(上記のような)犯罪行為がクラブ内で発生した場合は、内輪でかばうようなことなんてしないし、むしろ積極的に告発して、厳正な対処を行う。警察の捜査にも積極的・全面的に協力する」という宣言なり約束なりをするべきだと思います。

もちろん真っ当なクラブは元々そういう姿勢だとは思いますが、それを敢えて明言するんです。大声で。
クラブ関係者以外の、一般の人たちにも聞こえるように。

そうすれば、「なんだかよく分からないけど、そこまで言うなら協力してみようか」という人が、ひょっとしたら一人や二人くらい出てきてくれるかも知れません。

法律改正に向けた運動って、そういうものじゃないでしょうか。
クラブに行ったことのない人、クラブに良いイメージを持っていない人、そもそもクラブに興味のない人、などなど、関係のない人たちを巻き込む必要がある訳ですから、真っ正面から攻めた方が良いんじゃないのかなぁ、と僕は思っています。

そういう意味でも、委員会に関係している人の名前やプロフィールは公開すべきだと思います。
少なくとも代表者の名前くらい出しましょうよ。
僕はむしろ出さない理由が分からないんですけども。
(「出せない理由でもあるんじゃないの?」とか、変に勘繰られるネタを増やすだけ)

現在のサイトは、残念ながらそういう内容にはなっていません。
とにかく「署名を! 署名を!」と言っているだけに見えます。
自分たちを信用してもらおうと努力しているようには感じないんですよね……。

既にいろいろ準備していることもあると思いますから、今後アップデートされていくことを切に願います。

警察に対する態度について

クラブ摘発のニュースをよく耳にするようになったのは、ごく最近です。
具体的な事案について把握している訳ではありませんが、急激に増えたのはここ 1,2 年くらいでしょうか。
特に関西は「壊滅状態」と言われるほどですし、九州や関東からもそういったニュースが聞こえてくるようになりました。

クラブ関係者からすれば、「今まで何も言ってこんかったクセに、何をいきなり点数稼ぎのために摘発してくれてるんじゃコラ」(誇張・推測含む)というのがたぶん本音でしょう。
サイトや活動の様子からも、その怒りや憤りはすごく伝わってきます。

でも、それはたぶん逆効果。
一般の人たち(クラブと関係ない人たち=巻き込まないといけない人たち)に対して、悪い印象を与えるだけです。
むしろ、「警察に対しては全面的に協力する」という姿勢を示すべきではないでしょうか。
たとえそれが、気持ちとは裏腹のポーズに過ぎないとしても。

警察と対立構造を作るのは、得策とは思えません。
そうなれば、むしろ警察の思うつぼでしょう。
「クラブ」のイメージが悪化してくれれば、より摘発しやすくなるんですから。

逆に言えば、「クラブは警察に協力的」というイメージが一般に浸透すればするほど、警察は動きにくくなるはずです。
興味・関心を持ってくれる人や、摘発に対して「あれっ?」と疑問に思ってくれる人が増えれば、さすがに今まで通りにはいかないでしょう。

どうかここは大人の対応でいきましょうよ。

署名について

初めに書いた通り、僕は委員会が訴えている法律改正には基本的に賛成です。
なので、署名についてもするつもりではいるのですが、いくつか疑問があるのでそれを晴らしてからにしたいと考えています。

その疑問とは以下の通り。

  1. 「風営法の改正」を主な目的として署名への協力を求めているが、その効力はどれくらいあるのか。
    直接的な効力(強制力)がないのは分かっているが、署名提出後、どのような経緯で法律改正へと至るのか、どれくらいの期間がかかるのか、これまで署名によって(それをきっかけとして)法律改正に至ったケースはどんなものがあるのか、などが知りたい。
  2. 「自筆署名」と「WEB署名」の 2 種類があるが、これの違いは何か。
    自筆署名・WEB署名」ページの説明によると、「自筆署名は、衆議院議長・参議院議長宛ての請願署名となり、自筆の原本を提出」「WEB署名は、衆議院議長・参議院議長宛て、内閣総理大臣宛てに参考資料として提出」とあるが、はっきり言ってよく分からない。
    例えば「請願署名」と「参考資料」がどう違うのか、など。
    提出先の違い、「請願署名」と「参考資料」の違い、自筆であることが必要かどうかの違い、くらいしか記載されていないので、もっと具体的に説明して欲しい。
  3. 「自筆署名」と「WEB署名」の両方に同じ人が署名をしても問題はないのか。
    自筆署名・WEB署名」ページの説明によると、「まず自筆署名をダウンロードしてご記入いただき、その後WEB署名のご入力をお勧めしています。」という記述があるので、「自筆署名」と「WEB署名」の両方に署名するよう求めているように見えるが、それで間違いないか。
    また、「「自筆署名」と「WEB署名」はまったく別のものなので、同じ人が署名しても問題ない」という認識で間違いないか。
    であるならば、ページ最下部の「WEB署名について」の項で「総署名数の発表に際しては、WEB署名と、署名用紙署名の両方を合算します。」と記載されているのは、どのような意味なのか(もし「自筆署名」と「WEB署名」の両方を合算した数を「総署名数」とするという意味なのであれば、その場合、重複している人が相当数居るはずだが、それは問題ないという認識か)。
  4. 「10 万人」という目標値を設定した具体的な理由は何か。
    自筆署名・WEB署名」ページの説明によると、「「10万人」という数字は、Let’sDANCE署名推進委員会で議論をおこない、「法改正実現にむけて国に大きなインパクトを与えることのできる数」ということで設定しました。」とあるが、「国に大きなインパクトを与えることのできる数」の意味、および、それが 10 万人であるという理由は何なのか。
    例えば、「過去に署名から法律改正に至ったモデルケースを分析した結果、概ね 10 万人以上の署名が集まっていた」など、具体的な事例や根拠はあるのか。
  5. 「10 万人」という目標値は、どの署名を対象とした数字か。
    「自筆署名」なのか、「WEB署名」なのか、あるいは両方の合算なのか。
    また、両方の合算である場合、上記の通り重複している人が相当数含まれるはずだが、それはどのように対応するのか(重複分を取り除いた数字を出すための精査を行う予定、などはあるのか)。

こんな具合です。
正直、分からんことだらけですね。

「こいつウザいなー」って思われるかも知れませんが、大事なことなので問い合わせます(こういう感じのことに加えて、別の質問をさらに 2,3 個加えて)。
その回答を載せるかどうかは、内容次第ですかねー(もちろん許可を取った上で、ですが)。
問い合わせるつもりだったんですが、思い直して現在のところ静観中。

まとめ

気が付いたら随分と長い文章になっちゃいましたが、結局は「なんとなく怪しいし内輪だけで盛り上がってる感」があるってことなんですよね。
法律改正まで漕ぎ着けるには、クラブとは関係ない人たち(一般の人たち)を巻き込んでいかないといけないはずなのに、そのために必要なことがイマイチ足りてないというか、方向性がズレているというか。

あと、この問題について言及している他のサイトやブログ記事にも、どんどんリンクを張るべきじゃないですかね。
優れたコンテンツや記事はたくさんありますし、「これだけたくさんの人が問題視している」ということが分かりやすいと思うんですが。
掲載に許可が必要だとしても、目的や考え方が合致しているんですから、拒否されることはまずないでしょう。
それとも何か掲載できない理由でもあるんでしょうか。
今までまったくリンクされてないのが不思議です。

という訳で、この記事を委員会の中の人が何かの拍子に読んだ際には、少しでも汲んでもらえたら嬉しいです。はい。

ほとんど書き終わった段階で、紹介したい記事がアップされてた

実はこの記事を書くのに 1 週間くらい時間がかかってるんですが、その間にものすごく共感する記事がアップされていました。
その記事を読んだ頃には僕もだいたい書き終わっていて、推敲段階だったので途中に挟むこともできず、でも紹介したいのでムリヤリ追記という形で紹介します。
»『「ダンス」が法律で規制されている』という呼びかけについて思うこと | mutter

以下引用です(改行のみこちらで削除しました)。

規制されているのは、ダンスをさせることを目的に店舗を営業することであり、ダンスをすることではありません。

元々クラブの深夜営業から始まった話なのに、そこまで風呂敷を広げてしまうのは少しやり過ぎだと思いませんか。ダンスの重要性を説くことが、クラブの深夜営業の説得力を上げることだと、本気で考えているのですか。

自分たちの運動がどのように見られているかをそろそろ実感している頃ではないでしょうか。一言で言って「大事なことだけど何か胡散臭い」。主催者を明記しないサイトで署名を集めることに始まり、事実を誇張したり事実で無いことを説得の材料として用いたりすることは、運動として誠実さを欠いているのではないでしょうか。

僕たちが主張すべきことは「ダンス」の重要性なんかではありません。風営法によってクラブを弾圧することの無意味さと、クラブの健全性、それだけで十分じゃないですか。

まったく同感です。というか、僕なんかより的確で鋭い指摘がたくさんあります。
規制対象については、僕も誤解を招くような表現で書いてしまっている部分があったので、慌てて修正しました(公開前で良かった……)。
本質を突いている内容だと思うので、ぜひ読んでみてください。

(っていうか、他にもちゃんとした記事はたくさんあるんだろうなー……)

参考リンク

-考えてること・考えたこと
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