生まれも育ちも神戸。現在地は大阪・中崎町。座右の銘は「愉快」。

コバヤシのブログ

感想とか

映画『恋人たち』の感想。

投稿日:2015年11月29日 更新日:

評価:★★★★☆

映画館(テアトル梅田)で鑑賞。
観たのは 3 日前なのだけど、ようやく感想がまとまってきたので、既に Twitter で書いたことを再編集&追記しながらまとめてみる。

『ハッシュ!』『ぐるりのこと。』の橋口亮輔監督作品。
泣けそうで泣けない絶妙な歯切れの悪さ(いい意味で)と、後味の悪さ(いい意味で)と、何も解決してないモヤモヤした感じ(いい意味で)が観終わった直後の印象。

僕なりに一言でまとめると、「クソみたいな世の中」に絶望し切れない「いいバカ」たちの物語。
「絶望したくてもできない」「壊れてしまうこともできない」という苦しみを常に抱えながら、生きることを選択し続ける愛おしい人たち。
いろんなものを諦められたらもっと楽なはずなのに、諦められない。希望を持っちゃう。バカだもの。

「どんなに絶望的な状況でも人は希望を抱いていいんだ」という、いわば「許し」を与えてくれるような映画だったように思う。
未来のことを考えること自体に罪悪感や後ろめたさを感じる人はたぶんたくさん居て(理由は様々だろうけど)、そういう人たちに対して割と大事なメッセージを発してるような気がする。
希望は日常の中にあって、決して一足飛びでやって来ることはないけど、でも「今を生きること」を少しずつ積み重ねていくことで、一歩ずつ確実に近づいていくことはできる。
そんなふうに励ましてくれる映画だった。

僕の印象がそんななので、この映画のキャッチコピーになっている「絶望と再生の物語」という言葉には少なからず違和感がある。
絶望的な状況であっても完全に絶望しているわけじゃないし、壊れてない(壊れることができない)のに「再生」というのもちょっと違うような。
それよりは「回復」とか「受容」とかの方がしっくりくる。
(キャッチコピーとして使う言葉としてはあんまり相応しくないんだろうけど)
「絶望」とか「再生」とか、安易に・極端に言い切ってしまうことだけでは片付けられない、非常にアンバランスな状況を描いている映画だと思う。
もうちょっと中間の危なっかしいフラフラした感じを表現した言葉を探してみても良かったんじゃないかなぁ。

エンディングにもちょっと違和感があった。
「あれだけ引っ張っておいて最後は結局そんな爽やかな感じで終わるんかい!」ってのは率直に思う。
でも、あれを描くことで安心する人も居るだろうし……、まぁ、人それぞれかなぁ。
(僕としては、もうちょっと濁してもらった方が好みなんだが)

正直、この映画は「みんなに観てもらいたい」とは思わない。
そんな無責任なことは言えない。
ある人にとっては感動で泣ける映画なのだろうけど、他の人もみんな同じように感動できるとは到底思えないから。
言えるとしたらせいぜい「覚悟を決めて観てください」くらい。
Twitter で公式アカウントが「感動しました!」とか「たくさんの人に見てもらいたい!」みたいな感想をよくリツイートしてるのだけど、こういう感想ばかり紹介してるのはかえって宣伝臭がするので逆効果なのでは? と要らぬ心配をしてるのだけど、どうなんだろう。
(まぁ宣伝のための公式アカウントなのだから、そんなもんなのかも知れないけど)

この映画を観ててデジャヴ感があるなと思ってたら、星野源の『くだらないの中に』だった。
特に 2 番の終わり、間奏前。
「希望がないと不便だよな」「僕が笑えば解決することばかりさ」
映画館からの帰り道でたまたま聴いてたまたま気付いて、そのときはちょっと泣きそうになった。

−+−+−+−

以下、ネタバレあり。

アツシが「犯人を殺してやりたい」と職場の先輩に思いを吐き出すシーン。
先輩はそれを聞いて「それはだめだよ」と優しく諭す。
「だって、こうして話せなくなるじゃん」「俺はあなたともっと話したいと思うよ」
決して気の利いた言葉じゃない。これでアツシの気が晴れるわけもない。
こんなときにはこんなことしか言えないよなぁ、と言葉の限界を感じてしまう。
でも、たぶんアツシもこれが限界だと分かっている。
分かっているから、受け入れることができる。受け止めることができる。
そしてそのしばらく後のシーンで、「聞いていいですか?」と先輩の失った片腕のことをアツシが尋ねる。
それはつまり、アツシが他人の内面に自ら関わろうとした、ということだ。
だから、「あぁ、もう大丈夫なんだな」と思った。
それと同時に、きっとこの先輩にもこうして救われた過去があるんだろうな、ということも思った。
アツシもまたいつか誰かを救うことができるかも知れない。
僕らが「希望」と呼んでいるものは、ひょっとしたらそういうものなんじゃないだろうか。

−+−+−+−

冒頭のシーンで女子アナが離婚したいと訴えていた原因がよく分からなかったんだけども、調べてみたら結婚相手が「ブラッキー=被差別部落出身者」だからということらしい。

632 :名無シネマ@上映中:2015/12/03(木) 12:39:29.41 ID:4ycc2kWg
冒頭で女子アナが弁護士事務所で離婚したいって言ってたけど原因は何でしたか?
そこだけ聞き逃しちゃってモヤモヤしてるんで教えてください

633 :名無シネマ@上映中:2015/12/03(木) 14:21:04.43 ID:+fcmEVrI
>>632
ブラッキー(=部落)と言ってる。
結婚相手が被差別部落出身だということを隠してた、ということみたい。

634 :名無シネマ@上映中:2015/12/03(木) 14:21:36.34 ID:0dq2lmzU
>>632
彼が、「ブラッキー」=「部落」で、それを新婚旅行先で告白したから

「橋口亮輔監督」恋人たち [転載禁止]©2ch.net

へぇ。
「ブラッキー」って言葉があるのね。
その話をしてるときに一瞬音(声)が飛んだような気がしたけど、ひょっとしたら禁止用語的なことを言ってたのかなぁ(自主規制?)。

»映画『恋人たち』公式サイト

-感想とか
-, , , , , , , , , , , , , ,

Copyright© コバヤシのブログ , 2021 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.