感想とか 日記

『リーガルハイ・スペシャル』を観た。

堺雅人主演の人気ドラマ『リーガルハイ』のスペシャル版を録画で観ました。
このドラマは前のシリーズから観続けているんですが、面白いですねー。
基本的には軽いノリのコメディタッチなんですが、最後に締めるところはきっちり締めるという感じが良い感じ。
役者陣も実力派揃いですし。

で、今回も非常に面白かったんですが、中でもやはり最後のシーンは素晴らしかったんじゃないでしょうか。
堺雅人と大森南朋の演技力もさることながら、セリフが秀逸です。
特に印象的だったのは「だったらせめて狂気の世界で戦い続ける者たちの邪魔をするな」。
すごい言葉を書きますね。

という訳で、このシーンのセリフを文字として残しておきたかったので書き出してみました。
時間にすれば 10 分足らずなんですが、その間にこれだけの内容が詰め込まれてたんですね。
自分で書いてみて改めて感じますが、非常に練られた言葉だということが分かります。
「!」を使いたくなるセリフもいくつかありましたが、今回は一つも使っていません。
「?」や「……」も極力排除しています。
なるべく言葉そのものだけを抽出したかったので。
問題は著作権的にどうなのかってことですが……、怒られたら引っ込めます。

最後の法廷シーンのセリフ書き起こし

(赤目義二が調査した新薬のデータについて古美門が説明した後)

九條:
くだらない。
データ、統計、治るのが何%、死亡するのが何%、まったくくだらない。
結局患者を数字とデータでしか見ていないってことだ。
いまあなたが証明したことは、前院長がいかに血も涙もない人間かということ、そしていかに医師失格かということだ。

古美門:
彼が医師失格ですか。

九條:
人間一人ひとりの死に大きいも小さいもない。たとえデータ上は 1.3% であっても、本人にとってはたった一つのかけがえのない命だ。そのことを赤目医師はまったく分かっていない。
膨大なデータを調べたから何なんだ。そこに一人ひとりの人生が書かれているのか。どんな悲しみを抱え、誰を愛し、何を夢見て生きてきたのか、これを読めば分かるのか。
そういうものと向き合おうとも思っていないんだ。だから危険な治療でも軽い気持ちで薦めてしまう。死んだとしても、何ら責任を感じずふんぞり返ってる。冷たい言葉で、家族の心を踏みにじっても平気でいる。所詮人の命を、金儲けに使っているだけだからだ。
落ち度がない? 笑わせるな。彼の場合はそれ以前の問題だ。医師として、人間としての資質そのものが欠落している。病人の悪口は言いたくはないが、あえて言う。最低の医者だ。

古美門:
「医は仁術」、確かにその点から言えば、赤目義二は最低の医者かも知れませんね。
権威にあぐらをかき、不遜で横暴で、スタッフと軋轢が絶えず、いい歳をして若い愛人をたくさん作った。
患者や遺族の気持ちなど意に介さず、死んだらさっさと追い出し、患者の名前すらちゃんと覚えない。最低だ。

九條:
その通りだ。

古美門:
最後は病院から放逐され、家族からも見放され、広い豪邸でたった一人、助けてくれる者もなく倒れていた。
まさに哀れな晩年です。罰が当たったんでしょうか。
ですが、彼の書斎は膨大な資料の山で足の踏み場もないほどでした。
病院を追われた後も、彼はその山に埋もれて研究に没頭していました。
その姿を思い浮かべるとき、私には彼がこう言っているように思える。「医は科学である」と。

九條:
科学?

古美門:
難病治療という科学の発展こそが彼にとっては全てだった。そのために金を集め、実績を上げ、権力を欲した。
科学に必要なものはデータです。人生でも名前でもない。医学を前に進めるために必要なことは、遺族と一緒に泣くことではない。直ちに次の患者の治療にあたることだ。
彼はこんなことを言っていた。「病院が潰れようとも、家族がいじめに遭おうとも、そんなことはどうでもいいことだ」と。その後にこう続けたかったのではないでしょうか。「医学の進歩に比べれば」。
血も涙もとっくに捨てたんですよ。

(赤目医師が亡くなったとの連絡が入る)

古美門:
赤目義二は極めて優れた医師だった。私はそう思います。

九條:
何が、何が科学だ。科学なら人を殺しても良いのか?

古美門:
進歩と引き換えに犠牲を要求してきたのが科学だ。

九條:
じゃあ犠牲者はどうなる。

古美門:
気の毒だ。

九條:
それで済ますのか。

古美門:
済ますしかない。

九條:
残された人間の悲しみはどうなる。彼女がどんな思いで生きてきたと思ってる。この先どんな思いで……

古美門:
死んだからこそ意味があるんだよ。

九條:
何だと?

古美門:
死は希望だよ。

九條:
ふざけるな。

古美門:
その死の一つ一つが医療を進歩させてきた。現代の医療はその死屍累々の屍の上に成り立ってる。
誰しも医学の進歩のためには犠牲があっても仕方がないと思ってるはずだ。その恩恵を受けたいからね。
しかし、その犠牲が自分や家族であると分かった途端にこう言うんだ、「話が違う」と。
「なんで自分がこんな目に遭わなければいけないんだ」。「誰のせいだ」。「誰が悪いんだ」。「誰を吊るし上げればいいんだ」。
教えてやるよ。訴えたいなら科学を訴えろ。あなたのご主人を救えなかったのは現代の科学だ。

九條:
そんなことできるわけないだろう。

古美門:
だったらせめて狂気の世界で戦い続ける者たちの邪魔をするな。

もちろん世間には本当に悪質な医療過誤もある。
それは断じて断罪されなければならない。
しかしこと、この裁判に関しては、医療過誤ではない。

余談ながら、おそらく赤目医師の遺体は今頃、研究機関に運び込まれ、バラバラに切り刻まれていることでしょう。彼は自分の死後、肉体のすべてを臓器移植と研究検体に提供する契約をしていたからです。
科学は、死に意味があるんです。死こそ、希望です。

裁判官:
原告代理人、他に質問は、ありませんか。

九條:
詭弁だ。科学なんて言葉に惑わされちゃいけない。問題は、人間一人ひとりの命の重さだ。かけがえのなさだ。赤目医師はそれを軽んじていたんだ。だから今回の悲劇が起きたんだ。

古美門:
九條和馬先生、赤目義二を吊るし上げたところで、あなたの奥さんの弔いにはならない。
我々にできることはせめて、今ある命を慈しむことです。
一日一日が、奇跡なのだと知ることです。

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