小林賢太郎演劇作品(K.K.P.)最新作『ノケモノノケモノ』を観てきました。
会場は西梅田のサンケイホールブリーゼ。
前作『振り子とチーズケーキ』とは対照的に、かなり大きなホールでした(ざっと 700 〜 800 人くらいは入りそう)。
いやー、すごかった。
ホントにすごい。
何がすごいって、えーと……、ぜんぶ!
……というのが冗談じゃないテンションで言えるくらい、すごかったんです。
色んな紆余曲折を経て辿り着いた前作で一つの完成形を見た気がしてたんですが、いやいやまだまだ。
確実に次のステージというか上のステップというか、新しい世界が開けていました。
『ポツネン』や『小林賢太郎テレビ』で培ってきた表現手法も取り込みつつ、でも決して「演劇」という枠組みは崩さない絶妙のバランス。
正直、『P+』あたりは消化不良というか疑問が残る感じだったんですが、こうして新たな作品に結実するのを目の当たりにすると、もう、ね。
「すごい」としか言えないんですよ。
そして、前作で「完成」と感じたのに対して、今回は「始まり」を感じました。
これから、間違いなく小林賢太郎の作品はさらに進化していくはずです。
ホントにどこまで行くんだ、この人。
舞台装置や美術も非常に大掛かりで緻密で、徹底的に細部まで作り込んでいました。
特に屏風のような大きな壁(?)の使い方が見事。
スクリーンとして映像を映し出したり、仕込まれたドアを使って奥行きを表現したり。
それ自体に折り目があって形を変えられるので、ただ映像を映し出すだけよりも立体感がはるかに強く出ていました。
とにかく道具や装置の使い方が巧み。
今回使った絵やら模型やらの展覧会とかしてくれないかなぁ。
もっと近くでじっくり観たい人もたくさん居るはず。
それくらいのクオリティ、そして量でした。
あと、音楽もすごく良かったです。
チラシや公演情報には名前が載ってないんですが、たぶん徳澤青弦ですよね……?
ストリングスの低い響きが重厚感とおどろおどろしい空気を存分に作っていました。
後半の展開でパーッと光が射す感じも見事に表現。
……とまぁ偉そうに語ってますが、ほとんどは「気が付いたら音楽が鳴っていた」状態でした。
それはつまり舞台上の世界と違和感なくマッチしているということで、作者および演奏者の完全なる勝利です。
もちろんストーリーやメッセージも練りに練られていました。
序盤はやや不気味で怖さすら感じる雰囲気だったんですが、その世界の「ルール」のようなものが分かってくると、少しずつ物事を見る視点が変化してきている自分に気付きます。
そして、きっちり最後にはすとんと腑に落ちる結末を用意してくれてはいるんですが、そこはやはり小林賢太郎。
「あー面白かった」では終わらせない、考えさせられるフックをちゃっかり引っ掛けてきます。
そのおかげで、僕はちょっとだけ前向きになれた気がするんですけどね。
でも、人によっては一度立ち止まって考える機会になるかも知れないし、「このままで良いんだ」って再確認してまた突っ走る人が居るかも知れない。
数百人の観客それぞれで受け止め方や解釈の仕方は異なるんでしょうが、入り口となる問い掛けは全員が抱えている普遍的な悩みや不安なんだろうなぁ、と思います。
「自分は何者なのか?」
「すべてはあなた次第です」
これを一つの演劇作品で言えてしまう小林賢太郎って、やっぱすごい。
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no ちゃん音尾さんについて
先日発売されたばかりの「水曜どうでしょう DVD 全集第 21 弾」の中で『釣りバカ対決!わかさぎ釣り 2』に出演していた音尾さん。
ドラマではちょいちょい見かけることはあったんですが、ちゃんと最初から最後まで通してお芝居を見るのは今回が初めて。
いい味出してました。
大泉さんより年下とは思えない落ち着き具合と全身に帯びた哀愁。
しのつ湖の氷上で目出し帽をかぶりながらわかさぎを釣って食ってしていたあの頃から約 13 年、こんな大きな舞台に立つことを誰が予想していたでしょうか……。
グッズについて
今回は「たべっ子どうぶつ」というお菓子(ビスケット)だけ購入しました。
しかも意味なく 2 つ。
1 つは食べるとして、もう 1 つは開けずに残しとこうかなぁ……。
でも残しといたって結局何にもならないしなぁ……。
まぁ賞味期限はまだあるからちょっと考えよう。
T シャツも買おうかちょっと迷ったんですが、普段着るようなデザインでもないということで断念。
家着にするには値段が高すぎるし。
次回作のときはぜひ普段使いできるようなデザインでお願いします!
観客について
若い女性の比率がかなり高めだと感じました。
平日ってこともあったんでしょうか?
もしくは音尾さん目当て?
そのことと関係あるかどうか分かりませんが、どうも僕とはタイミングとかが合わなかったです。
僕が「怖い怖いw」と感じるところで爆笑してたり、「もう一盛り上がりあるだろう」と思って何もせず待ってたら大きな拍手が起こったり。
これまでそんなにズレてると感じることはなかったんですけどねぇ。
いつもとは客層が違ってたんでしょうか。
あと、上演中にも関わらず何かの袋(たぶん食べ物)をガサガサしたり、ペットボトルをゴソゴソしたり、扇子を激しめにパタパタしたり、隣の人とペチャクチャしたりする人が居たのはけっこう残念。
これは客層とかではなく個人個人の心掛けの問題ですが、周りに迷惑かけてるってこと分からないのかなぁ……。
むしろ不思議。
近くにどんな人が座るかなんて決められないので、こればっかりは運だし、劇場という空間をたくさんの人と共有する上でのリスクではあるんですが。
うーん。残念だなぁ。