感想とか 日記

クラムボンの新作『triology』はバンド史上「最強」のアルバム。

クラムボンのニューアルバム『triology』を聴きまくっている。
すごい。本当にすごいよ、この人たちは。
何かのインタビューでミトが言っていた、「アニソンやアイドルの楽曲に負けないクオリティと強度を」という意味がよく分かる。
これまでにはない密度というか隙の無さというか、無理矢理に(でも心地良く)グッと引きずり込まれて持っていかれる感じ。
得体の知れないエネルギーが渦巻いていて、ちょっとした恐怖すら感じるほど。

これまでクラムボンの作品は何回か聴いているうちにじわじわ染み込んでくることが多かったけど、ここまでいきなりガッツリ掴まれたのは初めてかも知れない。
しかも聴くたびに味わい深くなっていってる。

初めて全曲を通して聴いた後、「これはひょっとしてクラムボンの決意表明ではないんだろうか」という印象を僕は抱いた。
良い音楽を作るだけではなく、良い音楽を作ることによって何らかのことを成し遂げようとしているような。
もちろんこれまでもそういう意図はバックグラウンドとしてあったと思うけど、今回はそれがより前面に出て、明確に、鮮明に、かなり意識的に人々の前へ立とうとしている気がする。
「よかったら楽しんでいって」じゃなく、「力づくでも巻き込んでやる」みたいな。
「ゆっくり一緒に行こう」じゃなく、「自分たちが連れてってやるよ」みたいな。
『アジテーター』が分かりやすい例だけども、他の歌でも随所にそうした姿勢が見て取れる。

覚悟、使命感、危機感、焦燥感、あるいは「狂気」と言っていいくらいの、駆り立てられる何か。
「真摯」という言葉では片付けられない、あまりに真っ直ぐでプリミティブな危うい感情。
そういうものがこのアルバムの駆動部には組み込まれてるんだと思う。

このアルバムのテーマを敢えて考えてみると、一つ間違いなく挙がるのは「生命(いのち)」じゃなかろうか。
あるいは「未来」も含まれているかも知れない。
ここまで時間軸を取り入れた作品というのは、クラムボンの中で僕は記憶にあんまりないなぁ。
これまでは「今」のための歌が多かったような気がする。
そういうことに言及しなければならないほど、事態は切迫してる(と本人たちは感じている)ってことなのかな。

何か目新しいものがあるかと言えば、決してそういうわけではない。
言葉の使い方にしてもサウンド面にしても、これまでの作品で既に体験しているやその延長線上にあることばかりだ(これだけのことを既にこれまでやってきていること自体がすごいんだけど)。
それでも受ける印象がこうもまったく異なるということは、それ以外の要素が大きく作用しているということなんだろう。

『Rough & Laugh』や『はなさくいろは』は、僕の中ではあまりしっくりきていなかった。
もっと言えば、「浮いてる」と思っていた。
『ある鼓動』とこの 2 曲の繋がりがどうしても見出だせなくて、正直何がしたいのかよく分からなかった。
でも、こうしてアルバムとして一つの作品になると、しっかり在るべきところに収まっていてまったく違和感がない。
これはもう不思議というかさすがというか、感服しきり。
(本人たちからしたら、そうなるように作ってるんだから当然なのかも知れないけど)
いろんな音を鳴らしながら、いろんな言葉を紡ぎながら、最後は『ある鼓動』へと収斂していく。
この流れが本当に美しい。

悲しみや苦しみ、憂いや慈しみ、さらには「死」すらも内包しつつ、でも、だからこそ、限りなくポップに。
「最高」というのは状況や判断基準によって変わってくるけど、今作は間違いなく「最強」の名盤です。
ぜひご一聴を。

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