「狭い世界しか知らなくて、それがすべてだと思ってる。
もっと広い世界が待っているというのに」
外の世界の人たちはいつもそう言う。
「もっと広い世界を見ろ! もっとたくさんのことを知るんだ!」
「それが君たちのためなのだから!」
……本当に?
井の外の世界は、蛙のことを本当に待っているの?
狭い世界しか知らなくても、その世界に満足している。
それでいいんじゃないの?
「そんなつまんないこと言うんじゃない! 夢をもて、夢を!」
今より広い世界は、本当に必要なんだろうか。
確かに、新しいコトを知ったりモノを手に入れたりすることはできるかも知れない。
でも、いったいそれがなんだというのか。
今の世界に満足している。
知っている世界のことをよく知っているし、新しい世界のことを知りたいと思わないし知る必要もない。
外の世界には夢があるらしい。
それはそれでいいことなんだろう。
でも、夢がなくちゃ幸せになれないのか。
豊かさってなんだろう。
仕入れた情報の量?
誉められた数?
それとも、銀行通帳に印字された数字の大きさ?
たとえ井の中でも、豊かに生きられたらきっと幸せ。
何も知らなくても、知らないことを知らなければきっと幸せ。